牛頭天王は日本の各種宗教や信仰に登場する鬼神です。主に疫病を司どる神として、または疫病を鎮める守護神として崇拝されています。そんな相反する性質を持つ牛頭天王について考えてみたいと思います。
牛頭天王の起源と性質
元々牛頭天王は日本の神ではありませんでした。インド仏教から中国を経由して輸入されてきた神でした。また道教の影響を受けているという説もあります。その役割は死者を裁く神であったといいます。ヤマ(閻魔大王)や羅刹と関係があるとされています。牛頭天王は厳しい性格の持ち主で疫病をもたらす神として恐れられています。
牛頭天王の二面性
日本においては牛頭天王は疫病を司どる神です。869年、牛頭天王は京都に疫病をもたらしました。その年の6月7日に民衆は当時の禁苑であった神泉苑に神輿3基を送り、当時の国の数と同じ数の山鉾を66本(一本は約6m)を立て、国家の安寧と厄災消除を願ったといいます。この鬼神の怒りを鎮めることで疫病を避けようとしました。
牛頭天王は単に災いをもたらす疫病神というわけではありません。正しく祀られれば人々を守り、疫病を鎮める守護神でもあります。疫病を蔓延させること、疫病を鎮めること、この二面性が牛頭天王が恐怖ではなく畏れられる鬼神たる所以です。
牛頭天王は京都の八坂神社の祭神です。そして疫病退散の盛大な祭りは後に有名な祇園祭となりました。ちなみに2009年9月30日に祇園祭はユネスコ無形文化遺産に指定されました。
牛頭天王はスサノオノミコト?
前述した通り牛頭天王は疫病を流行らす鬼神です。一方神道におけるスサノオノミコトも嵐をおこしたり、疫病を流行らせたり、静めたりする荒ぶる神です。そしてどちらも恐れられながらも、適切に祀ることで災厄を鎮める神としても信仰されていました。荒々しい性格と守護の力の二面性を持っています。
神仏習合
神道におけるスサノオノミコトは性格が荒々しく、神話ではさまざまな騒動や悪事を行います。同時に八岐大蛇を退治するなど英雄的な一面も持ち合わせています。スサノオノミコトは災厄の神でありながら、農業の守護神でもあり、さらに浄化や再生を象徴する存在として描かれています。牛頭天王とほとんど同じ加護が得られます。
別の宗教でも同じ性質の神や仏が同一視されるのも、日本人にとっては都合が良く納得もいくものだと思います。
一方、仏教が伝来すると権力者が仏教を信仰するようになりました。仏教と神道は互いに影響を受けながら発展していくという状況になりました。結果として両者の境界が曖昧になる現象が生じました。現代に残る良い例としては鎌倉の鶴岡八幡宮があります。鶴岡八幡宮は元々神道の神社でありながら、仏教の寺院のような機能を併せ持つようになりました。神仏が共に祀られる空間になっているのです。
まとめ
似た性質の神や仏、加護を受けたい神や仏が同一視された神仏習合でした。疫病の蔓延と鎮静を司どるスサノオノミコトと牛頭天王が同一視されたことにも頷けます。
牛頭天王はインドや中国の仏教の流れを汲み疫病の神とみられていました。日本では特に平安時代に京都で信仰され、疫病の鎮めるために祭りを行いました。結果、現在に至るまで続く京都で有名な祇園祭になりました。
疫病を蔓延させる神であると同時に疫病を鎮める神である牛頭天王。あまりにも強い力であるため、怒らせないように祭りを行う必要があるのですね。まさに鬼神といわれる所以だと思います。
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