隠神刑部狸

隠神刑部 inugamigyobu
隠神刑部 inugamigyobu

隠神刑部は化け狸の中でも最強と言っても過言ではないでしょう。日本各地に数多くいる化け狸の中でも特に格上の存在です。化け狸の総大将として語られることもあります。 In English.

隠神刑部 inugamigyobu
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そんな隠神刑部について考えてみたいと思います。

刑部の名

元は天智天皇(治世668年-672年)の時代から存在する歴史ある化け狸です。808の狸の総帥であり、その数から八百八狸とも呼ばれています。808の狸はそれぞれが群れのリーダーです。総勢何匹の狸を率いていたか想像もつきません。

隠神刑部は伊予国(現在の愛媛県)の久万山の古い岩屋に住んでいました。長く松山城を守護してきた頼もしい存在でした。前述の通り四国最強の神通力を持っていたと言われます。

また刑部狸と呼ばれることもありました。この刑部は現在で言う裁判や刑の執行を行う職業で、同時に称号でもありました。刑部は松山城の城主の先祖から授かった称号です。松山城の家臣や民草からも厚い信仰を受けていました。

悪事を働く者に罰を与えたり、地域の守り神的な存在として崇められていたようです。正義感の強い化け狸だったのでしょう。

隠神刑部の力

隠神刑部は数百年以上の年を経て巨大化し、高い妖力を得た化け狸です。その力は非常に強く、変化の術や幻術で人々を惑わせます。その術でさらに大きな体をさらに巨大化し、周囲を威圧したりすることができました。

変化の力

変化の力はとても強力で、老人や僧侶、時の権力者に姿を変えることができました。これらの変化は主に人間を惑わさせるために使われたと言われています。

幻術

隠神刑部狸は幻覚を見せたり、聞こえない声を聞かせることもできました。森の中で道を見失わせたり、村に災害が起こったように見せかける力があります。

また幻術で山や川そのものの姿を変えることができるとも伝えられています。自然そのものを操るような大きな術を行使できる隠神刑部の力は非常に強いと考えられます。

統率力

狸の総大将として圧倒的なまでのカリスマ性を所持していました。自らの妖力だけでなく、808の狸たちの力を束ね、大規模な妖術を行使することも可能だったと言われています。

正義感

隠神刑部は、助けてくれた人には財宝を与えたり、村を繁栄させたりと、恩返しをする妖怪として描かれています。松山城を守護していたのもこの正義感からくるものかもしれません。

また悪行には罰を下すことでも有名です。悪事を働く人や隠神刑部を軽んじた者には厳しい罰を与えます。その罰は前述の幻術による恐怖の体験から、妖術により実際に災害を引き起こすなど多岐にわたります。

知恵と力

数百年生きた隠神刑部は、その長い年月の間に妖術を磨き上げ、狸たちの中でも特別な存在となっていきます。その長寿による知恵と経験から神仏にも匹敵する存在と目されることもあります。

このように隠神刑部の妖力は妖怪という枠を超えて、地域社会や自然そのものを揺るがす強大さを感じさせます。

隠神刑部の妖力や幻術

隠神刑部は、その妖力で自分の体を山のように巨大化させることで周囲を威圧することができました。例えば、ある旅人が刑部狸を怒らせた際、その姿を巨大な影として現し、旅人に恐怖を与えて追い返した話も伝わっています。その時の大きさは山よりも大きかったとか。

また山を巡る争いを自らが率いる軍団で他の狸や妖怪を制圧したという話もあります。隠神刑部の妖力で他の化け狸たちを服従させ狸の総大将となりました。その際も大規模な幻術や妖力を使い敵を圧倒したとされます。

隠神刑部狸の祟り

隠神刑部狸は『松山騒動八百八狸物語』の中のとある事件をきっかけに808の眷属とともに洞窟に封印されたともあります。その際、隠神刑部は強大な妖力を残し祟りとして地域に災いをもたらしたといわれます。

具体的には農作物の不作や洪水の発生から山中で道に迷ったり事故に遭う人が続出したといわれています。

これらの祟りを鎮めるために隠神刑部を祀るようになりました。結果として守り神のような存在になったという説もあります。いずれにせよ敵に回すと恐ろしい化け狸であることは間違いありません。

ただし、隠神刑部は妖怪としての伝承が多いため、正式に神として神社に祀られる場合は少ないです。地域の守護者や信仰の対象として、村人たちが祠を建てたり、祀りを行ったといった具合です。

封じ込められた洞窟

封じ込められた洞窟は松本市久谷中組に山口霊神という神社として残っているようです。

隠神刑部狸の恩返し

元々は正義感の強い狸であったため、助けてもらった人には恩で返します。恩返しの方法は幻術で財宝や豊かな作物を与えるといったものです。

しかし、他の狸の幻術とは異なり、もらった財宝や作物は消えることなく本当に価値のあるものだったといわれています。隠神刑部の感謝の気持ちが強かったことが窺い知れます。

まとめ

数百年生きた化け狸の総帥は恐ろしくも正義感に溢れる狸でした。松山城を守り、刑部の称号まで得ることになりました。しかしその最後は、色々あったにせよ、松山に謀反を起こす側につき、808の眷属とともに封印されることとなってしまいました。封印されてもなお妖力を残す隠神刑部狸は間違いなく最強の化け狸といえることでしょう。

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