これは私が某小学校で働いていた時に実際にあった話です。毎年一年生が後ろの窓から赤い女性がのぞいていると言って泣くのです。 In English.
小学一年生が泣く
日本のほぼ全ての小学校では廊下側に2枚の引き戸があります。前に一枚の引き戸、後ろに一枚の引き戸、そんな具合です。そしてそれらの扉にはのぞき窓があります。その窓から時々他のクラスの先生や学校長が教室をのぞいてみたりしていました。
私の勤めていた小学校もごくありふれた構造でした。どの学年の教室も規格に則った構造をしており、何のふしぎもないように思えました。
ですが、校舎2階の一番西側の教室だけは別でした。見たところ教室の造りは同じなのですが、他の教室と雰囲気が違うのです。南向きで明るい教室なのですが、どうにも不穏な噂が絶えないのでした。
ある時とある児童が赤い女性がいると言って突然泣き出しました。
赤い女性
私はその某小学校に赴任して初めての年でした。異様なことに静かな教室の中で一人の児童が泣いているのです。そしてもっとふしぎに思ったことは、担任の教師が平然と泣いている子に対応していることでした。
「どうしたの?何があったの?」と理由を聞くわけでもなく、その教師と児童は保健室へと行きました。しかも担任の教師は苦笑いをしていました。
私が保健室へ行った時もまだその児童は泣いていました。その児童は泣きながら養護教諭に「赤い女の人がのぞいていた」という趣旨のことを言っていました。
ふしぎなことに担任も養護教諭も苦笑いをしていました。不思議に思い、「不審者ですか」と私が聞くと養護教諭も担任の教師も首を振りました。その真相がわかったのは児童が下校してからのことでした。赤い女性とは一体なんのことだろう、そう思いました。
毎年の出来事
「今年も出たわね」と養護教諭は言いました。なんでも例の教室にいる児童は毎年「赤い女性が後ろのドアの窓からのぞいている」と言って泣くのだそうです。それも遡ることができる範囲で10年以上前から必ず起こる出来事だったようです。
それから6年間私はその学校で勤めていました。そして毎年一人二人の一年生が4月に赤い女性を見て泣き保健室にやってきました。
私が知りうる範囲で16年間同じことが起こっていたのでした。
30年の時を経て
それから15年が経ちました。また何の縁か今度は知人がその小学校へ赴任することとなりました。
その知人の受け持った学年は2年生でした。赤い女性の出る例の教室からは少し離れていましたが、それでも1年生の様子は十分にわかる場所が教室でした。
私が「今年も赤い女性は出たか」と尋ねたところ、知人は何のことだかわからないといった顔をしていました。
着任1年目だからわからないのだろうと思い、赤い女性のことについて教えてみました。そうしたら、そんな話は職員室でも聞いたことが無いと言います。
毎年現れていた赤い女性はこの15年の間に消えてしまったようです。一体何だったのだろう、というふしぎな思いが残りました。
実際にあった話です。知人が赴任してから7年が経ちましたが、赤い服を着た女性はもう見られないようです。本当に赤い服を着た女性は消えてしまったのでしょうか。誰にもわかりません。
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